2017年05月31日

新作映画『人生タクシー』を観るべき3つの理由

人生タクシー DVD』ってどんな映画?

イランを代表する映画監督のジャファル・パナヒが運転するタクシーには今日も、次々とテヘラン市民――死刑制度について議論する路上強盗と女教師、品揃い豊富な海賊版レンタルビデオ業者、バイク事故にあった夫と泣き叫ぶ妻、映画の題材探しに苦心する監督志望の大学生、金魚鉢を手にした年配の女性二人組、カメラに夢中な小学生の姪っ子、強盗に襲われたセレブな旧友、政府から停職処分を受けた弁護士――が乗り込んでくる。

観るべき理由:1――世界3大映画祭制覇の巨匠、なぜタクシーを運転している?

メガホンをとったのはイランを代表する映画監督にしてカンヌ、ヴェネチア、ベルリンの世界3大映画祭で名誉ある賞に輝く実績者ジャファル・パナヒ。そんな彼が自らタクシーを運転し、ダッシュボードに置いたカメラで撮影したのが本作『人生タクシー DVD』だ。

そもそも、なぜ世界的巨匠がタクシーを運転しているのか? 実はイラン社会の実像を真摯に描き続けた結果、国際的に評価される一方、イラン国内では“政府への反体制的な活動”を理由に2010年から20年間にわたる“映画監督禁止令”が下されているのだ。それでも映画製作を諦めないパナヒ監督は、自宅での軟禁生活を記録した『これは映画ではない』と発表し2011年のカンヌ映画祭に出品! 今回も再び当局の監視を逃れながら、“舞台”を自宅からタクシーに移した最新作を完成させてしまったのだ。そのアイデアと手段はもはや発明! 何より逆境に負けず、操作された都市 DVD映画を撮り続ける不屈の精神にグッときてしまう。

観るべき理由:2――これはドキュメンタリー、それとも…?

そんな本作が切り取るのが、イランが抱える社会的な闇、そこに暮らす市民の日常と“本音”にほかならない。ただ、シビアな現実を背景にしながら、その日の雰囲気 DVD映画そのものは非常に軽やかで、ユーモアたっぷりなのが本作の魅力。例えば「コソ泥なんて、死刑にすべき」と過激な持論を展開する男が実は路上強盗だという皮肉、金魚鉢を持ち「とにかく急いで!」とせっつく老婆コンビのシュールさ、愛する妻への遺言をスマホで撮影させる夫の切実な滑稽さ、頭が良い分、口も達者でちょっと生意気な姪っ子のキュートさなどが絶妙にミックスされ、愛すべき人々の織りなす群像劇に仕上がっている。

まるでドキュメンタリーのような作品だが、実際は? そんな虚実が縦横無尽にクロスオーバーする作風もとても刺激的だ。



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Posted by 藤原麻衣 at 14:18│Comments(0)映画
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